セミフリーランス医師という働き方

フリーランス医師の作り方

以前、『フリーランス医師の定義って?』という記事において、

  • 非常勤雇用契約のみによる医師勤務を行なっている
  • 法定福利厚生を勤務先に委ねず、自らの準備により賄っている

という2点を、フリーランス医師の定義としました。

今の所、異論反論が出てこないのでしばらくこの定義を続けていこうと思いますが、私の周りにはメイン施設における勤務をベースとしつつも週2.5〜3日程度の勤務時間にとどめ、残りの時間を非常勤医としてフレキシブルに働いている医師がいます。

その勤務形態が勤務医とフリーランス医の中庸に当たるイメージを受けたので、その働き方を『セミフリーランス医師』と勝手に命名し、紹介してみたいと思います。

この働き方は、前回紹介した非常勤医のディスアドバンテージを解決してくれる可能性が高い勤務形態であると考えます。

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セミフリーランス医師という働き方とは?

先ほど紹介した医師たちの勤務形態ですが、

① メイン施設で2.5日+非常勤で1日×2ヶ所=Total 4.5日
② メイン施設で3日+非常勤で1日=Total 4日

という2つのパターンでしたが、必ずしもこれは定義というわけではなく、個々の事情によりモディファイして頂ければよろしいかと思います。

メイン施設で勤務する割合をフルタイム常勤の60〜80%に抑えつつ、①非常勤勤務の割合を増やす、または、②全体の勤務日数を減らす、というイメージでしょうか。

いずれの先生も常勤医と遜色ないレベルの医療活動を行いつつ、学会や社会的な所属をそのメイン施設とすることで社会保障や社会的信用も同時に確立し、常勤並みの福利厚生を受けることができる、という状況を作り出しています。

フリーランスに関するブログを書いておきながら、こんな事を言うのも気が引けますが…私は2022年の冬期五輪まではフリーランスとして働くものの、その後はこの形を実現させて勤務を行う予定です。

<追記>
この勤務体制の是非について、医療法における標準数の算定に用いられる32時間ルールに関連した鋭い質問を頂いておりますので、ご興味を持たれた方は是非コメント欄もご覧頂ければと思います。マイナー外科医先生、ありがとうございましたヾ(__。)

セミフリーランスのメリデメとは

キャリア&スキル形成

常勤医に近いスタイルで仕事を行うことで、相対的にチャレンジングな手技や治療においても周囲からのバックアップを手厚く受けることが可能となります。学会発表や論文作成においても所属を確定させることで、様々な形の支援を受けることが可能となります。

特に若くしてフリーランス医師として活動しようとしている人にとっては最も悩みのタネとなりやすいキャリアデベロップメントの部分を補ってくれるというのは、自分の将来を見据える上で、大きな安心感を与えてくれることでしょう。

そのトレードオフとして、後輩の指導や上司のフォローといった面において御恩と奉公を実践する必要もあるというのは言うまでもありませんが…f^_^;

社会的信用

保険証によって自分の雇用先をはっきりと示すことが可能となるため、クレカやローンと言った各種審査において勤務医と同様の信用が得られるはずですし、アカデミックな分野においても所属がはっきりしますので、色々とやりやすくなるでしょう。

これらは、セミフリーランスが持つ優位性の最たる部分であると思います。

各種安定性

メイン施設を常勤に準じた年俸(月収)契約とすることで雇用安定性や収入安定性が格段に高まるとともに、常勤であれば賞与や退職金といったイベントも発生します。

カレンダーの影響を受けやすい月曜日や週末をメイン施設としておけば、収入効率も上振れすることに加えて自分の休みも増えるという素晴らしい相乗効果も得られます。

安定性が得られれば、様々な自由度は低下します。収入の減少に伴う経済的自由度の低下はもちろん、『好きな時に休んで、好きな時に仕事をする』というような時間的自由が失われると共に、ノマドワーカー的な動きも難しくなるかもしれません。

また、常勤契約の場合様々な役職や委員会といった雑務が増えたり、残業やサービス回診といった目に見えない時間的・身体的負担が増加する事が予測されます。

社会保障・福利厚生

フリーランスが保険への加入においてあれこれシミュレーションを行い、自分で手続きを行って…という煩雑な思いをしながら準備を行わなくてはならないのに対して、メイン施設で週に20時間以上勤務すれば、その施設において社会保険への加入を継続することが可能となります。メイン施設での勤務日を減らすことで、保険料を下げることもできるでしょう。

また、常勤に準じた福利厚生を受けられるという契約を結ぶことで、所属施設の託児所などに代表される各種サービスを受けられるというメリットもあります。

時間がイレギュラーになりがちな医師という職業においては、医療施設内の24時間対応託児所というのは、お金以上にありがたいものだったりしますよね。

環境変化への対応力

麻酔科のように、「ベースの施設を作らないと、専門医取れませんよ〜」という事態が、いつ、どの診療科にも起きないとは限りません!ちなみに麻酔科の場合は週3日以上の同一施設勤務が必要とされましたので、この数字は意識しておくべきかな、と。

まぁ、専門医+専門医資格による診療報酬のインセンティブが発生しない限り、専門医の価値がそれほど上がるとは思えませんが…こういった環境変化への対応という点でも、学会上の常勤施設を残しておくことは意外と重要かもしれません。

セミフリーランスに適している人々

フリーランス転向に踏み切る勇気がない人
⇒お試し感覚で、ぜひ体験してみてください。

フリーランスに憧れているけど、まだキャリアの形成が必要な人
⇒常勤としてスキルアップやキャリアを積みつつ、フリーランス転向を狙いましょう。

辞めたいけど、周囲からめっちゃ慰留されている人
⇒「週2.5〜3日勤務なら検討します。でも、給与はそれなりに…」という交渉も可能です。

その施設でフルタイム勤務に戻る可能性を残しておきたい人
⇒施設との縁を切ることなく、フリーランスの世界を覗くことができます。

フリーランスに移行する各種手続きが面倒な人
⇒余計な事務作業やストレスが発生することはありません。確定申告のみです。

様々な事業や起業を考えている人
⇒金融機関の評価を受けるにあたって、常勤医は最強の属性となります。新設法人も保証人の個人属性が重要になりますので、常勤の肩書きを残すメリットは非常に大きいです。

まとめ

メイン施設の肩書きを残しつつ、フルタイム常勤と比較してその勤務時間を減らして非常勤勤務やパラレルキャリアに費やす時間を増やす働き方である、『セミフリーランス』という勤務の形を紹介しました。

肩書きや所属を失いたくない状況の人や、ドラスティックな変化を求めない人にとって適した働き方であると言えます。

コメント

  1. マイナー外科医 より:

    大変勉強になります。

    わたくしもマイナー外科医で、先生と同じことを考えたことがありました。

    でも私の働く県では、常勤扱いになるには週32時間の勤務が必要とのことで、断念した経緯があります。

    先生の提唱する週3日勤務では非常勤扱いとなり、社会保険から外され(国保になる)、月曜が祭日だとその日は無給になるのではないでしょうか?

    このへんどうクリアしたらいいのか、ご教示願えれば幸いです。

    • フリーランス整形外科医 フリーランス整形外科医 より:

      コメントありがとうございました。
      先生の仰る通り、まず私の「常勤医」と示した働き方が32時間ルールによる常勤/非常勤の壁によって区別されるものではなく、『常勤に準じた年俸・休暇および福利厚生・社会保険が保証された契約』による勤務というものであったため、そもそもの誤解を与える書き方であったことをお詫びいたします。そちらにつきましては早速訂正を行いましたので、ご確認頂ければ幸いです。

      週3日では、先生の仰る通り32時間を満たしませんので…雇用する側がそれを理解した上で、更に医師をキープする価値があるという状況でなければこのような雇用条件は出てきませんが、標準医師数の算定において比較的余裕のある施設では十分実現可能でしょう。給与形態や福利厚生、有給休暇については契約条件が常勤/非常勤にかかわらず、特約のような形で但書を記載する事でモディファイが可能です。

      あとは、契約書上の就業時間も大きく関わってきますので、実際にそこを週3日+月2回土曜などの形で合法的に?クリアすることも可能だとは思いますが、私自身はそういった経験は当然ありませんし、周囲にそういう人間もおりませんので、実現可能なアイデアか否かはわかりませんf^_^;

      社会保険に関してはむしろ週2.5日の勤務でも入れますし、社会保険が崩壊しつつある現状においては、入らないようにする方が労力を要するというのが正直な所です。
      ①週20時間以上の勤務
      ②1年以上勤務の見込み
      ③非学生
      ④8.8万円以上の月給
      という4つの要素を満たした場合には、むしろ加入しなくてはいけない(合算が強制される)という状況ですので…フリーランスとしてはむしろ、このラインを踏み越えないようにするように調節しております。

      マイナー外科医先生には記事の稚拙さ故にご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。今後ともこのような機会がございましたら、是非コメントを頂けると幸いでございます。

  2. マイナー外科医 より:

    なるほど・・・

    医師数に余裕のある施設で、自分にしかないような技術を有していれば、先生の週3日常勤プランは実現できそうですね。

    身も蓋もない言い方ですが、「病院と自分の力関係」で実現可能かどうかきまるような気がしました。

    社会保険の件も納得です。

    大変勉強になりました。先生のフォロワーがいずれ増えてくるかもしれませんね。
    今後も記事楽しみにしています。

  3. フリーランス整形外科医 フリーランス整形外科医 より:

    マイナー外科医先生、追記させて頂きます。

    先程事務方にも確認しましたが、やはり32時間ルールの常勤/非常勤というのは医療点数加算における常勤医師数の換算という価値しか持たないそうです。常勤医師数として1未満の勤務時間だから契約を非常勤としなくてはならない理由はなく、そこの常勤/非常勤については施設ごとの判断になるそうです。
    (この場合の常勤という意味合いは、学会出張費補助や館内施設の利用、賞与といった福利厚生はもちろん、社会保証の有無や日給ではなく月給〜年俸制にするというようなものから、非常勤のように雇用者都合で契約が更新されないということを排除する、といった内容的なものとなります)

    逆に言うと、非常勤で週3日の契約を結ぶ際にも、給与は月給や年俸制で構わないし、契約書の内容にて福利厚生を始めとする特約をいくらつけようとも給与が常軌を逸するといったことが無ければ、雇用者と医師の契約内容について保健所がとやかくいうことは一切ないとのことです。

    また、クリニックや有床診療所では常勤医師数の違いによる加算が1人orそれ以上の2段階しか存在せず、逆に常勤医師数が3人を超える計算になってしまうと薬剤師を入れなくてはいけないという義務が発生するため、常勤医1名以外は全て非常勤契約とし、そのかわり契約内容を常勤医に準じたものにしている施設も多いようです。

    そういった意味では、常勤医師数の充足率によって取れる加算が増える施設(病院)は、コスト面から32時間をクリアした人間のみ常勤で雇用したいのでしょう。民間病院で医師数が充足しきっている施設や、医師数を1以上3未満にしたいような有床診療所orクリニックでの勤務が狙い目なのかもしれません。

    このあたりのものを整理した上で、いずれ記事として紹介させて頂ければと思います。

  4. マイナー外科医 より:

    なるほどよくわかりました。
    法律云々というより、病院との交渉次第のようですね。

    病院が欲しがる特殊技術を有していることが、このライフスタイルの前提となりますね。

    眼科や整形とか、消化器内科のESDみたいに、一人の卓越した術者に依存する科目のほうが、このライフスタイルに向いてそうですね。
    (チーム組んでやるような腹部外科とかでは難しそうです)

    とても勉強になります。また疑問があったら質問させてください。