安易なフリーランス転向をオススメできない理由

フリーランス医師の作り方

フリーランス医として働けば、常勤医との給与のアービトラージを利用することで効率よく稼ぐことが可能となります。拘束時間や労働負荷も常勤医より軽減されるでしょうから、様々なストレスからも開放されるでしょう。

とはいえ、必ずしも皆がフリーランスに転向するべきかといえば、決してそうとは限りません。私自身もフリーランスになって初めて気づいたディスアドバンテージが多々ありますので、今日はその点をご紹介しつつ、フリーランス転向における注意点を紹介していきます。

スポンサーリンク

職務選択の自由度が自身のスキルに依存する

仕事のやりがい、収入、余暇時間など、業務内容の選択には様々な目的があり、それは個人によって異なるものとなりますが…どのような目的であっても、スキルが高く・多いほど効率的に目的を達することが可能となります。

自分が理想とする労働環境の構築には職務選択の自由度が必要であり、その自由度とはスキルを売りにすることで働き方(契約)の選択肢を多様化させつつ、自分に最適化した契約を結ぶこととほぼ同義なのです。ハードワークを求める人も、ゆるふわで働きたい人も、スキルレベルは高いに越したことはないというのがフリーランス医の実情です。

このように、フリーランス医師において大切な職務選択の自由は『スキル≒仕事の臨界点』という言葉で表されることから、スキルの取得・維持ということをイメージしておかないと、早々にフリーランス医師市場から退場ということにもなりかねません。

現在のスキル≒仕事の臨界点

フリーランスとなると個人のスキルによる診療内容によって報酬が決められる一方、自分のできるもの以上のことを経験することが難しくなります。報酬に加え、業務内容もスキルによる臨界点が存在するのです。

その反面、フリーランス医師のスキルアップに対して雇用者側はなんの利害も興味も持っていません。フリーランサーのスキルアップに投資をすれば売上が上がる、という状況であっても永続的な効果(雇用)は期待できませんし、もしより高いスキルを持つ医師が必要になった場合にはそれに見合う人材を雇用すれば良いだけなのですから。

日常診療の中で自分の持つ医療レベルの範疇を超えるような症例を多く経験して、大幅なスキルアップを果たすというのは医療安全の観点からもかなり難しいですし、雇用側としてもそういったリスクを負ってまで診療体制を整えるというのはありえませんから、「現在自分が有するスキル≒仕事の臨界点」という形に収束してしまうのです。

スキルアップに労力を要する

自身のスキルを伸ばすことにエネルギーが必要となるため、スキルが伸び悩む可能性があるということです。自分がフリーランスとして3年間働いた印象でいうと、少しずつスキルアップを継続できてはいるものの、それまでに得られた周囲からのアドバンテージは少しずつ食いつぶしている…というような状況ですね。

病院勤務医や医局に属している医師であれば、所属先医師のスキルを伸ばすことはそのまま病院や医局の利益に直結しますので、スキルアップに対する周囲のサポートを受けられますが、フリーランスではそのあたりのものが基本的に受けられません。

また、所属組織による「チーム」という存在がないことも見逃せない部分です。先輩後輩関係による指導や、チャレンジングな症例を担当する際のサポートというのは、スキルアップを効率的かつ安全に行う際には非常に大切な要素ですが、フリーランスではそれらを期待しにくい環境にあることが多いです。

もちろん、職場内に指導者の立場である医師がいる場合もありますが、基本的には「単なる同僚」という立場ですので、(その施設で長期間の勤務が確定しているような状況を除き)指導を受けるには信頼関係の構築が必要となります。

個人的には、医師というのは常にスキルを伸ばし続けていないと自身の価値が毀損する職業だと思っていますので、フリーランス転向後もスキルアップには強い興味があります。その方法としては、

① 収益を度外視して他施設へ勉強に出る日(週1〜2日)を作る
② レベルの高い施設の常勤or定期非常勤として勤務し、研修を行う

などが有効ではないかと考えており、過去3年間は①の方法を取っていました。来年以降は週2日は②の形を取り、2年毎に研修施設を変えていくという作戦を検討中です。

「非」常勤という不安定な立場

医師と言えどもフリーランスという立場は、雇用安定性という面では厳しいものがあります。私の場合には「医師としては50代半ば(あと10年)まで働ければ十分かな…」と思ってフリーランスになったのですが、20〜30代の医師の場合には雇用安定性(継続性)や医師求人市場のバランスについて情報収集を行い、フリーランス転向の是非を検討しましょう。

所属施設からのサポート

スキルの項でも書きましたが…常勤ではない医師に対するサポートを(過度に)期待してはいけません。そのサポートとは福利厚生から始まり、スキルアップや自己研鑽、社会的な立場の保証などなど、常勤医であれば当たり前のようにサポートしてくれていたものが、個々の契約次第という形になってしまいます。

仮に各種医療トラブルが発生した際にも身銭を切って(病院の保険や弁護士をフル活用して)サポートしてくれるとは限らないですし、「蜥蜴の尻尾切り」のような事態に陥る可能性もあるということです。

フリーランス医の増加

医療的背景として、医師全体としては充足傾向にあるものの専門の細分化が進んでいることや、地域・診療科によっては充足医師数のバランスが崩れていることもあり、医師はまだ売り手市場であるとされていました。実際にフリーランスに転向しても、雇用や収入が確保される可能性は十分高いと考えられます。

近年では医師紹介・転職会社が乱立しており、フリーランス医の存在をビジネスチャンスと見込んだ事業者がフリーランス転向を推奨し、就労先のマネジメントを支援するという形のビジネスモデルを拡大しつつあります。収入やQOMLを重視するという医師の割合が増えているという状況を鑑みると、今後もフリーランス医の数は増加していくことでしょう。

その結果、定期/スポットの非常勤給与相場は下落傾向となることは避けられません。都市部において、後期研修医のレベルで対応可能な案件では時給1万円を割り込むものも出てきていることから、安定した収入を効率よく確保するためにはスキルの獲得・維持が必要です。

経営状況の変化に対する脆弱性

端的に言うと、病院経営が傾いた際に最初に切られる立場であるということです。

医療業界自体はそれほど不安定ではありませんが、厚生労働省に診療報酬という形で収入の鍵を握られていることや、国民皆保険制度の崩壊という自体も現実味を帯びている事を考えると、雇用先が経営破綻をきたす可能性もゼロではありません。

非常勤医はその契約の多くが1年契約の積み重ねです。不測の事態の場合にはあっさりと解雇となってしまう可能性が非常に高いことを意識しておかなくてはなりませんし、自由や報酬といった好条件を得ていることの対価としてそういったリスクがあるという点は理解しておかなくてはいけません。

人間力&マネジメント能力のデザイン

フリーランス医師は医師としての能力を評価されて契約に至ることから、基本的にはスキルと対価のバランスを求められるという一方、実社会の中で生活していくためにはコミュニケーション能力や社会性、一般常識を身につける必要があります。

勤務医と比較して病院外でのタスクが多くなるフリーランス医にとって、そういった「人間力」を身につける事は意外と重要なポイントです。病院内でヒエラルキーの上層に位置し、丁重に扱われている医師という職種にとっては意外と?欠如しがちな能力ですので…

また、勤務医を続けていれば年齢とともに役職に就き、管理責任が生ずる立場になることで自然にマネジメント能力が養成されていくのですが、フリーランスという働き方を選ぶ医師の多くは現場志向であることからこういった管理者・雇用者としての能力には興味を持たない傾向があります。

最終的なキャリアを常勤医として考えているのであれば組織の中で若手の育成指導を行う能力や部署のマネジメントを行う能力は必須ですし、雇用者の立場から物事を俯瞰的に観察するという視点も大切な能力の一つです。書籍やセミナーなどを利用してそういった能力を身につけていかなくてはなりません。

医師としての評価が非常に高いドクターが、その実力を請われて病院の要職に就任するも、マネジメント能力や人間力の欠如を理由にその職場がうまく回らなくなる、ということはよくある話です…よねf^_^;

組織をマネジメントできる能力は管理職には必須の能力となりますので、50代以降の働き方や立ち位置の選択肢を増やすという意味や、自らの価値におけるストックオプションとしての位置づけにもなることから、できる限り身につけるべき能力だと思います。

永続的にフリーランスのまま?

以上をまとめると、フリーランス医は瞬間的に高収入を得る事が可能ですが、それを維持するためには学問的にも物理的にもハードワークが必須となる一方、長期的なキャリアデベロップメントにおいてはデメリットが多いという働き方です。

若くしてフリーランスとなり、(その労働環境や収入を維持しつつ)30年間その働き方を続けるという選択肢は、非常に労力が高い割に中高年以降のリスクが高い選択肢と言えます。現在は非常勤医師の給与やスポットアルバイトの給与が常勤医のそれと比較して高いという状況ですが、そういったアービトラージも現在の市場環境に限られたものであり、5年後にどう変化しているかはわかりません。

現在フリーランス医師やドロッポ医が大きく稼げると言っても、そこは市場の歪みと自らのハードワークによるものですから…その環境が20年も30年も変わらず続くというような勘違いをしてはいけません。そして、常識的に考えると医師給与レベルは下がり、医師充足率は上がり、フリーランサーが増加するのですから、その待遇がどう変化していくかは容易に想像がつきますよね。

こういったリスクを考えると、フリーランスという働き方をするよりは、自分の目的とするものや労働条件を満たした常勤先を探すほうが、リスクの面でも難易度の面でも低いかもしれませんね(笑)

フリーランス医師という働き方を選択するにあたっては出口戦略をしっかりと立てておくことを強く推奨します。自分のオススメはセミフリーランスという雇用形態に持っていくことですので、ご興味あればぜひぜひ。

コメント