大学医局と市中病院 それぞれのメリット

フリーランス医師の作り方

私が医師になったのは2001年のことです。当時は初期〜後期研修制度は存在せず、自分が希望する進路の大学医局に入局するというパターンが9割以上を占めていたので、私はそのパターンでした。その後、研修制度が確立してからは、臨床研修を行った病院や市中病院に就職するという選択肢も一般的になっています。

フリーランス医師に必要な医師スキルやキャリアを積むためには、どちらが効率的なのかという観点からこの両者を比較してみました。なお、医局に入局した場合には後期研修のうち最低1〜2年という期間を大学病院で働き、6年目以降は医局人事のもとに市中病院でも勤務するものと仮定します。

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医師スキル

大学医局のメリット

専門性のレベルについては市中病院でも充分に高いのですが、大学医局に在籍することで専門領域の選択肢が広がります。特に大学病院はその科目ごとの専門領域がほぼ網羅されているので、専門スキルを身につけるためには非常に適した施設だと思います。

また、高度医療や先端医療を学ぶためには医療設備&環境面が整備された施設で勤務する必要がありますが、そういった施設は大学医局人事が握っていたり、医局関連病院であることが多いので、やはり医局人事に乗るということがファストパスである場合が多いです。

あとは田舎に行けば行くほど、【大学医局からの派遣】というバックグラウンドは診療をやりやすくするとともに、患者さんの信頼も得やすいため、医師スキルを身につけるにはプラスに働くでしょう。

市中病院のメリット

一般的な基礎スキルを身につけるという観点からは、市中病院の方が断然有利です。大学病院と比較して、患者数に対する医師数の割合が少ないために若いうちからCommon diseaseの診療経験を積みつつ、医師スキルを身につけることが可能です。

大学病院勤務の医師と比較すると臨床面での成長は早い印象を受けますので…自分の目指す専門領域が存在して対外的なレベルも高い、という場合は市中病院へ就職して研修を進めるという選択は非常に合理性を持つものだと思います。

とはいえ、就職先のブランド力次第では…大学医局に属する人間よりも不利なこともチョイチョイあります。個人の努力やふるまいで簡単に跳ね返せるような程度のものですけど、ね。

アカデミックキャリア

大学院への進学や論文作成、留学といったアカデミックキャリアの形成については、その環境づくりやサポートという面から大学医局に軍配が上がります。特に、留学に関しては医局の持つ影響力や繋がりというのは非常に大きなプラスとなります。

私の場合も臨床を重視したいという希望を出した所、市中病院で勤務しながら夜間大学院に入学するという形で博士号を取らせてもらいました。ただ、学会レベルの発表や論文ということになりますと…市中病院でもアクティブな活動をしている人は多いので、大きな差はないと考えます。

私自身はもともとアカデミックな仕事に対する苦しさや辛さを感じていた人間でしたが、医局を辞めて市中病院に就職したところ、(自由度が増したせいか?)アカデミックな仕事の量が減ってしまいましたf^_^;

収入およびQO(M)L

収入

自分の場合にはバイト代を含めて、

大学病院(6年目&10年目):1300万円
市中病院(2年目〜9年目):1100~1800万円

という感じでしたので、市中病院のほうが給与面では明らかに恵まれていますね。大学医局に所属する際には関連病院への出向期間以外の期間、すなわち大学病院や大学院在籍期間における給与の減少は覚悟しなくてはなりません。

あとは、結局自分の時間を切り売りしてお金にしているという点ではどちらも一緒ですし、それをどれだけやるか、というところで収入はいくらでもコントロールできてしまいます。そういう意味では週4〜4.5日勤務の市中病院勤務というのが最強のパターンでしたね。

QO(M)L

これは、『QO(M)Lが高い』と感じるポイントが個々によって異なるので難しい所なのですが…個人的にはどっちもどっちだと思いますので、私自身が感じたあるあるを書いておきます。どちらが高いか?という判断については、おまかせしますね(笑)

<大学医局(大学病院)編>
・大学医局は研修会や講演会、学会のしがらみが多く、平日夜や土日が潰れやすい
・医局人事により、色々な病院で勤務をすることができる
・逆に毎年、流浪の民のように放浪するハメになることもしばしば
・学会や研究会の発表、論文、依頼原稿に追われる生活になりがち
・仕事ができないダメ医者でも、雇用が保証される
・若いうちはコメディカルの雑務が降りかかる(採血やライン取り、各種検査etc)
・給与が安い分、当直や土日のバイトが多くなる
・手術・外来ともあまり忙しくないので、昼間の余暇時間がそこそこある
・病床数が少ないので、受け持ち&仕事量が少ない。オーベンになるとかなり楽。
・自分の科に必ず当直がいるので、時間外の呼び出しが比較的少ない

<市中病院編>
・所属科以外のしがらみが少なく、比較的自由に生きられる
・医局と違い転勤がないので、ライフスタイルが安定する
・特に自己研鑽の部分において、楽な方向へ流されがち
・ベースの給与待遇が良いぶん、アルバイトを減らすことができる
・医師の仕事のみに集中できる
・とはいえ、様々な問題があれば解雇のリスクあり
・就職した科の人員や年齢バランスによっては、Dutyが多くなってしまうことも
・自分の専門科より広く(内科系/外科系など)、日当直・救急対応をしなくてはいけない
・時間外や休日に救急外来から呼び出しがかかることが多い
⇒これは、整形外科(マイナー外科)に限ったこと?かも??

で、結局どちらが良いの?

私は、大学医局をオススメいたします。その理由としては、

  • 大学医局(大学病院)でしか学べない事柄は非常に多い
  • 医局人事の関連病院出向を通して、市中病院勤務は必ず経験できる
  • アカデミックな基礎や人間力は、医局に在籍すれば自然に身につく

の3点ですね。特に3つ目のポイントが最も重要かもしれません。

医局という集団の中で不利益を被ることもありましたが、それ以上に周囲からの有形無形のサポートを受けられますし、ともに同年代が切磋琢磨するのを見ることで苦しい仕事も頑張ることができますので…総合的に評価すると非常に効率の良いキャリアパスだったと感じます。

また、医局人事による市中病院勤務というのは、(大学病院でステップアップを目標にするのでなければ)専門・高度医師スキルを身につけつつ、収入や時間も確保されるという最高の環境です。「医局」=「大学病院」ではありませんので、そこを逆にうまく使うという方法もあることを知っておいてください。

個人的には、【大学医局≒大企業 市中病院≒ベンチャー企業】だと思っています。就職の時点で自らの明確なビジョンがあり、そのビジョンを達成するベストの選択が市中病院ならそちらへの就職をおすすめしますが、そこまでのビジョンや覚悟がない場合には、潰しの効きやすい大学医局という選択肢が無難だと思います。

え?
フリーランスになるにはどちらが良いか?
…正直、どっちでもOKです(笑)


ただ、私自身が提唱しているフリーランスの定義となる専門的スキルを複数個身に付けること&高度なスキルを身につけるためには、大学医局のほうが効率的だと思いますよ。

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