常勤医と非常勤医のアービトラージ

フリーランス医師の作り方

医師の誰もが日々感じている医療の世界における歪みの一つとして、

『常勤医と非常勤医の給与差』
『常勤医と非常勤医の業務差』

という2つが存在しており、互いを羨ましく思うような優位点がそれぞれ存在します。フリーランスに転向する際にはこの歪みを利用することで効率的に収入を増加させるとともに、職務におけるストレスを減少させることが可能となります。

その一方、デメリットの部分についても理解を深めておかなければ逆に不利益を被ることもありますので、今日はそのあたりのお話をしてみようと思います。

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収入の差

時給の差

常勤医の雇用契約の例として、週4.5日勤務で実働は週40時間(ここのツッコミはなしで)というケースで考えてみましょう。実際の年俸を時給に換算すると、
・年俸1,600万円⇒時給8,300円
・年俸2,000万円⇒時給10,400円
・年俸2,400万円⇒時給12,500円

という数字です。

もちろん、科目や専門により多少変化はあるものの…実働を週40時間に抑えることはまず不可能であり、ここに日当直が加わってくると、更に時給は下がってしまうことでしょう。

その一方、半日の外来で時給12,500円(4〜5万円/3〜4時間)というアルバイト案件というのは、探せばいくらでもあるはずです。

この時給差はかなり大きなものであり、仮にこの条件で週4.5日の非常勤勤務を行えば年収は1,730〜2,160万円に達しますし、実働時間についても確実に週40時間以内におさまります。収入がもう少し欲しいと思えばここに週1ペースで寝当直バイトを入れて、+200〜240万円を上積みすることも可能です。

年収の差

時給の差≒年収の差、という考えは間違ってはいないものの、それはあくまで額面上の年収の話であり、手元に残る金額ではありません。

医師としての給与以外を法人に入れたり、個人で不動産を所有⇒個人事業主として開業⇒経費投入による個人の医師給与圧縮、法人による社会保険加入や小規模企業共済の利用…というような様々なスキームを用いることにより、手残りの金額には大きな差が出てきます。

ただ、このスキームに関しては非常勤医のほうが実現させやすい環境にあるというだけであり、常勤医であっても実現可能なものですので絶対的な差ではありません。

保障の差

額面の時給に大きな差があることは間違いありませんが、非常勤の場合には健康保険や厚生年金との自己負担が増加することや、退職金が存在しないということを加味したシミュレーションを行う必要があります。

また、何も考えずに国保に加入して保険料の個人負担分が増加すると、かえって損をすることもあり得るのです。

また、有給休暇の日数や託児所の利用などといった福利厚生の面においても、非常勤医の立場では常勤同様に与えられないことがほとんどですから…その部分を自己負担するという必要があることを理解した上で損得勘定をしないと真の給与差は見えてきませんので、その点には注意が必要です。

業務の差

勤務内容の差

常勤医の場合は所属する病院のニーズに合わせて様々な業務をこなす形となりますが、非常勤医の場合、外来、手術、特殊検査、健診業務といった種々の業務の中から、自分の希望に合った勤務内容を選ぶことが可能です。

ただ、外科系における手術や入院を要する特殊検査については術後管理の問題から、執刀/検査を行うのは常勤医に限られる場合が多いです。

非常勤医の立場でそれらを行うためには、高度な医師スキルおよび専門性を有する必要があるでしょう。

勤務時間の差

これは、病院勤務医であれば契約に含まれる日当直のような時間外勤務に加え、休日回診や待機、オンコールといった各種のDutyに要する拘束時間の部分です。

非常勤ではそのあたりのグレーな時間が発生することはまずありませんし、契約時間を大幅に超える状況に陥る事はまず無いため、予定や行動予測が立てやすいという利点があります。

また、日当直は別途契約にて給与が発生する形となることから、個々のニーズに合わせて調整することが可能となります。

常勤医の場合、Dutyを減らすためには周囲の理解や強力が必要となりますが、非常勤医となることでこのストレスは軽減されます。

責任・信用の差

ここで言う責任は、所属施設における『雑務』的な責任のことです。40〜50代となって所属施設の役職が上がっていくにつれて、〇〇委員会とか管理者会議だとかといった医師以外の仕事が増えてくるものですが、非常勤医であればこれらを回避することが可能となり、より医業に集中できる環境を作ることができます。

もちろん、常勤だろうが非常勤だろうが患者に対する責任の感じ方に差があるということはありませんし、あってはならないことです。とはいえ患者さんによっては信用面において非常勤医という肩書きはマイナスであり、医療の質やコミュニケーションでカバーする必要があることを自覚しておくべきでしょう。(専門外来の場合には、必ずしもそうではありませんが…)

そして、患者だけではなく周囲の医師やスタッフから認められるためにも質の高い仕事を日々行う必要がありますので…私のように手術を定期的に行っている非常勤医は、割とプレッシャーを感じながら仕事をしている人が多いのではないかと推測しています。

まとめ

常勤医と非常勤医の間にある給与差や職務差を紹介すると共に、それらの違いに内包されるデメリットとなりえる要素を掘り下げてみました。

収入面では、給与単価で評価すると圧倒的に非常勤医が有利ですが、社会保障費や福利厚生、税制といった要素を勘案して比較を行う必要があります。

非常勤医の場合には医業に集中しやすい環境を作ることが可能ですが、常勤医と比較して信用面や社会保障・福利厚生において劣る場合が多く、それをカバーする必要がある事を理解しておきましょう。

上記の問題を効率的に解決しうる【セミフリーランス】という働き方について、次回の記事にて紹介させて頂こうと思います。

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